役者根性

映画制作に伴ってKitty Artistでは役者を抱え始めた。確か村上弘明がその第一号だったと思う。かけ出しの頃よく一緒に野球をした。僕らは「Goblins」というチームを作っていたが早朝野球のためなかなかメンバーが集まらない。そこで暇な村上やデビュー前の来生等がかり出された。

村上君の第一印象は礼儀正しい青年。役者として登り詰めようと必死だったんだろう、僕ら若造にもきっちりと挨拶をする。無駄口はたたかない。言うのは「おはようございます」と「有り難うございます」の二言。ついたあだ名が「おはようございます」のお兄ちゃん。

宣伝チーフの立場から何回か彼とマネジャーと一緒に接待した事がある。この時役者とマネージャーの根性を見せつけられた。

マネージャーの根性。酒を飲んでいて何かのことで相手のTVプロデューサーが怒り始めた。僕は「サイテーの野郎、こんな席蹴飛ばして皆で帰ろう」と思った。その時マネージャーのとった行動。赤坂のクラブ、衆目の中土下座した。「申し訳ありません」と何度も繰り返す。相手がたじろいで「もういいから」と言っても土下座を止めない。五分も続けたろうか。僕は何も言う事が出来なかった。

役者の根性。僕らはNHKの大河ドラマ等を手掛けるシナリオライターを接待していた。この人物とてもよい人なのだが、男色で有名だった。「村上君をよく知りたいから一緒にグァムにいきたい」と言い出した。当然断るだろうと思ったらマネージャー「有り難うございます。よろしくお願いします」と答える。村上君もこの人物のことはよく知っているのだが、「よろしくお願いします」と答えた。世の中には凄い事があるものだと驚愕した。(グァム行きは実行された。ただし部屋は別、何も起きなかったと言う)

一年後村上君は大河ドラマに初出演し、その後必殺シーリーズ等を経て人気俳優になった。

一途さだけが人間を成功に導くのかもしれない。

 

 

音楽旅日記